【ハイセレクタ】

 
いつも自分の都合の良い方を選ぼうとする人、つまり貴方のこと。
選択とは常に捨てるという行為を伴う。
何かを選ぼうとすると、必然的にそれ以外のものを捨てざるを得ないのだ。
「ビュリダンのロバ」という話がある。空腹のロバが一頭おり、その左前方2mの所にえさが置いてある。右前方2mの所にもまったく同じものがある。ロバは両方のえさを代わる代わる見てるだけで動こうとしない。
結局、ロバは悲しげな顔をしたまま餓死してしまう。うがった話である。
さて、プロの将棋は140手前後が平均指手である。
これが盤面に指手のカタチで表れた部分だが、頭の中の読みとしての指手はこれの数万倍か数十万倍になるはずだ。これでは将棋を指しているというより、手を捨てているといった方がピッタリする。
棋士はそれだけの選択をせまられているのである。彼等が概して短命なのも分かる様な気がする。
昔の賢者が言っている。
「ある行為の値打ちは、その行為を選ぶためにあきらめた他の行為の値打ちとの総和である」と。
あなたが結婚の相手を選ぶということは、その他の何十万人かの女性(男性)をあきらめることなので
ある。(?)


「私は本当によく選ばれる人間です。子供の頃は子役に選ばれ、十歳の時には、南北会談で花束を渡す役に選ばれた。大学時代にはとうとう工作員に選ばれてしまった」
                              金賢姫

                             (1988年4月)