【ノイズキラー】

　ノイズ(雑音)の話は以前載せたことがあるが、ノイズと一言でいっても実は種類はたくさんある。エレクトロニクスの世界ではホワイトノイズとかあるいはなんとピンクノイズなどといういかがわしいものもあるが実は真面目なものである。その昔、アメリカのポピュラーソングに"ビューティフルノイズ"というしゃれた歌があったことを思い出す。
それはとにかく、自動制御の世界でもノイズは嫌われ、対策としてノイズキラーを挿入するのだがこれがくせものなのだ。ノイズに長期間曝されていると、ノイズキラーの機能が発揮できなくなる。要するに壊れるのだが、そうなるとノイズキラー自身がノイズ発生源となる可能性がある。おまけにまずいのはノイズキラーが破壊された場合、その発見は一般的に困難である。
ここまで書いてきて思いつくのはいわゆる"いい人"のことだ。集団のなかに変な人間が入ってきた場合にいい人がいてくれるとノイズキラー役となり、良い雰囲気を保つことができる。しかしながら"いい人"の根本は他人との衝突を避けることで良い関係を保っており、それ以上のものは出さない。ちょうどノイズキラーがノイズをカットする働きはあるが、さらに進んで原音をもっと良い音にするといった積極的な仕事まではしないのと同様である。
場合にもよるが、ノイズキラー自体が最大のノイズの発生源であると言えるのかもしれない。
毒にも薬にもならないこのコラムにもまったくそのまま当てはまることなのだが……。

　［好鉄不打釘　好人不当兵］
　　　よい鉄は釘にならない。良い人は強い兵にはなれない。(中国の諺)

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（1991年7月）

　