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【ヒステリシス】

 自動制御屋はきどって「ヒス」などというが、これでは「ヒステリー」と区別がつかないではでないか。
貧乏人が小金をためていき、とうとう100万円になった。当人、極めて気を良くして考える。
「俺も金持ちになったもんだ」。
その金を元手に始めた商売がうまくいき、貯蓄に励んだ結果、ついに大金持ちになる。
ところが、取引き先の倒産で仕事に失敗、手元に残った金はわずか100万円。男は絶望し、ついに自殺してしまう。という話がある。
これなどはヒステリシス理論(?)を知らない為に起こる悲劇である。すなわち、金がたまっていく時と、減ってくる場合で、かくも人間の心理状態が違ってくるのである。
その点、しっかりしているのはある種の芸術映画の監督だ。
映画の初めに、超素敵(?)な画像を見せてしまうと、その後同じレベルのものを出しても、観客は前ほど感激しない。それをよく知っている名監督は、最初は小出しにしておき、クライマックスを最後の最後に持ってくるように苦心するのだ。
話は変わるが、手こぎの舟で航海していた大昔。往きと帰りでは、明らかに帰りのスピードの方が早いことが分かっていた。不思議なことに機械化された現代の航海でもその傾向は変わらないという。
このことを海の男は「ホームスピード」としゃれた名前をつけている。
これに反し、どこかの社員の如く出社に要する時間より帰宅に要する時間の方が大幅に遅くなるのもヒステリシス現象の一種であるが、これをどう呼ぶかは不明である。
                           (1989年1月)