◇ 合成の誤謬

英語ではfallacy of compositionという。
部分の真理は必ずしも全体の真理とは限らないということを意味する言葉である。ミクロとかマクロとか訳のワカランことをいっている経済学の用語である。
要するに、個人だとか、一企業の利益を追求するような行動、経営が国の利益、発展に繋がるか否か、ということである。「そんなことは当たり前」と悪魔は思うのだが、頭のいい連中は違うのである。
一般的にこの「合成の誤謬」は日常茶飯事というレベルである。一企業のなかでも同様。部門毎の利益追求が企業全体の利益になるのだろうか、しかも長期的にとなると結構怪しい。
日本の企業が安い労働力を求めて、極めて安易に中国に進出しているがこれも同様である。安い労働力は得られても、他に大きなコストがかかっていることを忘れている。あるいは隠しているのである。

今日現在(2004.5.2)、年金問題が大きな国民の関心事になっている。国会議員の年金未納ということで騒ぎになっているが、こんなことなら、未納がばれてCM出演料を返却した江角マキコも今だったらそんなバカをしなかったろうな。

ということは別として、「合成の誤謬」についてである。
年金を支払うには当然、原資がいるわけでそれがないと話にならない、そしてもうすでに年金受給者たちにこれから先、ずっとお国は年金を支払わなければならないのだから。
ということで役人達は納付金と支給金との関係だけで計算しているのだが・・・・ 

厚生労働省所管の特殊法人・年金資金運用基金(旧年金福祉事業団)に年金保険料からつぎ込まれた経費総額が5256億円に上ることが29日、分かった。経費の内訳は、高額な理事長報酬や職員の人件費、金融機関への手数料など。厚労省は、同基金が年金財政に与えた損失としてグリーンピア(大規模年金保養基地)事業などによる約1兆3000億円と説明していたが、経費総額は公表していなかった。年金保険料は年金福祉施設の建設費などにも投入されており、年金給付以外に使われた保険料の総額は、少なくとも4兆5000億円もの巨額に達することが判明した。 
  毎日新聞(2004.3.1)

それ以外に、年金業務に携わっている役人(およびお役所が発注している民間人)の数はどのくらいいるのだろうか?
もしかしたら、年金納付などしなくても年金は税金で支払い可能ではなかろうか。我々が支払っている納付金は単に年金業務に従事している連中などの経費で大半、吹っ飛んでしまっているという悪魔の大胆な推論が成り立つからである。旧厚生省は余裕があったから儲からない(儲からなくてもいい)厚生年金会館などを作り、しかもそれを維持するために皆から集めた年金をつぎ込んでいるのあります。もちろん館長含めトップはすべて厚生省の天下りである。

所謂、公的年金制度がスタートしたのは昭和17(1942)年。労働省年券保健法の制定によってである。これは昭和19年に厚生年金保険法に改称された。
いずれにしても、太平洋戦争のまっただ中。明日が分からないこんな時に、何年後、何十年後の老後を考える人間がいるのだろうか。また、兵隊がどんどん死んでいくなかで、空襲で民間人が死んでいるなかで、将来の日本のことをお国の役人が考えるのか。

これはドイツを統一した鉄宰ビスマルクの、強い軍事国家を目指して導入した社会保険制度をまねたものだと考えるのが自然である。
要は鉄砲の弾が欲しかったのであります。

さて、太平洋戦争が終わった。もう、鉄砲の弾を買う必要がなくなったら、集めた年金の遣いどころがないではないか。困った役人(?)は年金福祉事業団なるモノをでっち上げて、金をばらまくシステムを作り上げた。
厚生年金会館が儲からない?
なに、戦争で使う鉄砲の弾に投資したって儲からないではないか。
という屁理屈が成り立つのである。

いずれにしろ、日本の年金制度を支えてきたのは大企業を中心にした会社とサラリーマンである。未納者のツケも全てそちらにというのではいくら何でもというところだが、お上は取りやすい所から取るというのが大原則なのでそれも当たり前。
だが、企業が前述のように中国等に労働力を求めていくのに従い、確実に年金給付者が減るということになっていく。頭のよいお役人もそこまでは考えていまい。
或いは知っていても知らんぷり、という世界である。

老後、年金を貰おうと思い、一生懸命年金納付金を支払ったあげく、その金額たるや、生活保護受給者より給付金が少ないケースもあるという話がある。
悪魔は大阪弁は嫌いだが、思わず
「ホンマカイナ!」
といわざるを得ない。

まさに、いたるところに「合成の誤謬」あり。
というのが結論。


「個々の行為の総和は愚行に終わりかねない」
         ーシューマッハ(経済学者)

「個別の製品や行動を省エネルギー化すると、国全体では
 物質生産の量的拡大をもたらし、エネルギー消費量を増大
 させる」
        ー武田邦彦(中部大学総合工学研究所教授)
*
PS.今日(2004.6.6)の日経新聞朝刊に、
「国民年金推進員の給与 7都府県、徴収額上回る」
という記事があった。
やはりね・・
2002年からスタートした、国民年金推進員制度だが、全国で約2000人程度の推進員を採用、約35億円の給与を支払った。
が、一万円の給与で集めた保険料は愛知県が最低の4000円、東京で8200円となっている。
優秀なのは栃木県で46900円とあるが、これも対象者数が問題になってくるから、単純な比較にはならない。
これも、悪魔が心配していた所であった。
こんなモノは、役人がやっても駄目。督促のプロ、消費者金融の武富士とかに委託すればよいのだ。効率が100倍は違うだろう。
さらに、「合成の誤謬」を念頭において考えれば、この推進員制度を推進(?)するための役人の数(給与)はこの計算には入っていないということである。

*1.2004.6.6追加

*参考にどうぞ。

「暮らしの窓」
http://www.tbs.co.jp/newsi_sp/kurashi/030812.html
「日本財団 図書館」
http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2002/01252/contents/209.htm

 



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