◇ムーンリバー

「ムーンリバー」はことわざでもなんでもない。
1961年のアメリカ映画「ティファニーで朝食を」の主題歌で、作詞はジョニー・マーサー、作曲はヘンリー・マンシーニの曲である。監督はブレイク・エドワーズ。同年のアカデミー主題歌賞を受賞。
傑作コメディー映画「グレート・レース」はこの同じメンバーで作られた。
「ティファニー・・・」の主演はオードリー・ヘップバーン。相手の男優はジョージ・ペパードであった。
「Moon river wilder than a mile」
(ムーンリバーの幅は1マイル(1.6km)以上だよ)で始まるこの歌詞だが、長年その意味が分からなかった。
「揺れる水面に月光の筋が映りこんだ様子を、ムーン・リバーという」という意味もあるらしいが、この曲のイメージとは違う。

そんなある日(十数年前)、毎日新聞に「唄の話」というコラムにこの曲のことが載っていた。
毎日新聞社の米国特派員が悪魔と同じ疑問を持ち、米国人に聞いたところ、「Moon riverと大文字になっているから固有名詞だ」
と教わり、色々調べたそうな。
結局、作詞したJ.マーサ(作曲者、H.マンシーニ等と組み良い作品を沢山書いている)の故郷にある実家の裏に「バックリバー」という川があり、それがムーンリバーとよばれているとのことを発見したというのである。

この話は忘れていたが、ある日それを思い出し、半信半疑でインターネットを検索してみたら、アメリカのサイトに、なんと作詞者の名前JOHNNY MERCER Website
(http://www.johnnymercer.com/moonriv.htm)

<Johnny Mercer's home on "Burnside Island", fronted the "Back River", now known as "Moon River"と紹介されている>

を発見。もう一度、なんと、新聞記事のとおり、彼の実家と「バックリバー」の写真が載っていた。
本当に大きい川。ただし、写真で見る限りあまりロマンチックな川ではない。
テファニーのあるニューヨークにはハドソン川とイースト川があるが、そんなに川幅が広くない。

ニューヨークでロマンティックな曲の作詞するときに故郷を思い出して、その情景を描くというのは、ちょうど日本だと「月の砂漠」の作者(加藤まさを)がやはり故郷の御宿を思いながら書いたというのに良く似ているな〜と思ったものだ。

映画では彼女のアパートの住人に、住む日本人(ユニオシ)役をミッキー・ルーニーが演じている。
日本人の典型という感じで、出っ歯で黒縁メガネ、英語の発音も酷いというまさに日本人(ジャップ)を差別したもので不愉快である。
ただし、これが原作通りなのかどうかは不明である。

この映画の原作はトルーマン・カポーティの小説「Breakfast at Tiffany's」.
カポーティの原作の中にも、女性主人公が歌を歌う場面が出てくるが、もちろんそれは「ムーン・リバー」ではない。
カポーティはこの映画がハッピーエンドとなるイージーさが原作の意図を踏みにじるものと激怒したという。主人公役を演じたオードリーも彼のイメージでは彼女とは対極と言っていい、マリリン・モンローだったことも原因になっているのだろう。
こんなロマンティックな小説を書いたカポーティだが、ペリーとディックという二人の若者による農場主クラター一家4人の強盗殺人事件を元にした「冷血」という凄く怖い、本当に怖い小説でも有名である。


Moon River
Words by Johnny Mercer /Music by Henry Mancini (1961年)

Moon river
wider than a mile
I'm crossing you in style some day
Oh dream maker you heart breaker
Wherever you're going I'm going your way
Two drifters off to see the world

There's such a lot of world to see
We're after that same rainbow's end
Waiting round the bend my huckleberry friend
Moon river and me






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