◇領土問題は重要だが、水は生死の問題だ

シャロン元イスラエル首相が自伝の中で書いている言葉である。

悪魔はご幼少のおりに父親から
「水は全ての争いのもとである」
という言葉を教わった。

西部劇「大いなる西部」でのテーマもこの水の奪い合いにあるのだ。
また、名画中の名画「アラビアのロレンス」では、冒頭、ロレンスのガイドが砂漠で
他族の掘った井戸から水をくみ上げようとして射殺されるという強烈なシーンがあった。

良く言われるが、人間の身体の60%は水であるという。
そして、地球にも多量の水を有しているが、その97%が海水である。
その残り3%が人間が利用できるものなのだが、水蒸気、地下深くにある伏流水や
地下水、南極や北極の水や雪などは使用できないため、実際には全体のわずか
0.0001%に過ぎないそうだ。
<以上 「水web 」 より引用>

「水の未来ー世界の河が干上がるとき」フレッド・ピアス著(日経BP社)という本が
出版された。(2008.8)

この本には世界の河が干上がっていく有様が鋭く描かれている。
そして、それは人間の愚行が原因になっているというのだ。

その中からいくつか引用してみる。

一つはインドの「緑の革命」である。
これにより、インドの人口が2倍になったにもかかわらず飢餓に陥ることはなかった。
まさに革命である。
これは単位面積あたりの収穫量が極めて大きな小麦を開発したことにより可能になった。
しかし、この小麦の新品種は多量の水を消費する。
エントロピーの法則を持ち出すまでもなく、一方的にいい話などないのである。
水を確保するために井戸を更に地下奥深く掘らねばならない。そして、それをポンプで
くみ上げるのである。
地下水の急激な減少が進んでおり、将来の悲劇的な状況を止める手段はないという。

もう一つは旧ソビエト連邦時代の大プロジェクトである。
それはアラル海に流れ込む二つの大きな河をウラル海周辺の農地に灌漑水として綿花
栽培用に供された。
これは大成功であった。
が、これも長くは続かなかった。
原因はいくつかあげられるが、最悪は「塩」であった。
灌漑水が綿花の根に届いた後に地下深く浸透していく。
そして、そこで塩を含んだ土地にぶち当たる。そうすると塩分は逆に地上へと上がって
来るのだ。
そうなると綿花は死に絶え、生物は生きていられない砂漠になってしまうことになる。
このことは「ゴルゴ13」でも取り上げられている。
砂漠化と同時に河は干上がり、アラル海はもはや海ではなくなってしまった。

この本を書評で取り上げている養老孟司氏(今週の本棚・毎日新聞 2008.8.3)は結論として
こう書いている。
「・・・・・ 小麦の新品種の開発は福音だったが、その福音は別な災厄をもたらした。
 生物の作るシステムについて、「新技術」の導入くらい怪しいものはない。
 バイオ燃料の推進論に、だから私は懐疑的である。
 人間はそれほど知恵のある動物ではない」。


「水には流さない」
   ー悪魔


・この項の続編は「黄河を治める者は国を治める」で・・・

・水のことわざについては「水のことわざ・格言館」が凄い。

<おまけ>

「そもそもイスラエルとアラブの対立の根底には"水利”問題が大きく関与して
いる。我がイスラエル側の圧倒的勝利に終わった”6日戦争”に先立つ戦闘では、
ヨルダン川上流で、強引な取水計画を進めるシリアに対して、戦車攻撃でこれを
阻止した・・・
続く第三次中東戦争では、ダムを破壊してやった。
ここ数年来の和平交渉のなかでもヨルダン川の”水利問題”は最重要課題であり、
それゆえ、妥協点が見いだせない問題でもある」。
「確かに水利問題は世界中の緊急課題だ・・・
ナイル川を巡っては、スーダン、エチオピアとも内戦にまで発展している。
ガンジス、メコン、その他世界の重要な河川が、いまや、火薬庫と化している」
   ーゴルゴ13(2005年3月「生と死を分かつ川」より。2人のイスラエル情報員の
            話として)











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